栄和堂への想い
すみません。とーーーーーーーーーーーーっても長いです。
そして、泣きながら書いてしまって、支離滅裂です;
幼い私にとって「栄和堂」は、そこにあるのが当たり前でした。
(栄和堂という名前まで理解していなかったと思いますが笑)
当時同じ通りにもう一軒本屋さんがありましたが、
文房具まで揃った「栄和堂」は私が絵を描くための道具もたくさんあり、
又、おばあちゃんの家から近いこともあって一人でお遣いに行っていました。
警戒心の強い私の母なので、今から考えれば、子供を一人で行かせられる信頼感・安心感があったのだと思います。
町の人たちに愛される素晴らしい本屋さんでした。
一度閉店し、「ブックスペース栄和堂」となった当初は正直、少し「入りにくさ」を感じていました。
自分の知らない栄和堂になってしまったように思ったんです。
失礼なことを言って申し訳ございません…
大人になってから見る湘南深沢の景色は、幼い頃と同じようで、気づかないうちに変わりゆく深沢の風景に追いつけず、
なんとなく「変わったな」と感じつつおばあちゃんの家に行っていました。
カフェ好きコーヒー好きになってからは、また見える景色が変わり、視野も広がり、
今まで行ったことのないところにも足を伸ばしてみようと行ったのが、ほしの珈琲豆やさんです。
湘南モノレール・湘南深沢駅から見えるほしの珈琲豆やさん。
ずっと気になっていましたが、伺ったのはオープンから1年経ったくらいの時だったと思います。
マスターとの会話が弾み、それから私の行きつけの一つとなりました。
祖母はこの頃、外に出ることができなくなっていました。
体もか細く、食事もごくわずかでしたが、それでも、私と姉の名前を呼び間違えることがないくらい、とてもしっかりとしていて元気でした。
(姉と名前が似てるので両親も時々呼び間違えます笑)
私が「今度イラストの展示するんだよ」とDMを見せればそれを嬉しそうに眺めるおばあちゃん。
「いつかひとちゃんの個展観てみたいわ。ちっちゃい時から上手だったもんね。飾ってあったらどんな風に見えるのかしら。でもおばあちゃん、遠くだと行けないからなあ」
そんなことを言うおばあちゃんに「私がおんぶして連れてってあげる!鎌倉でもいつか個展開催するから、絶対観に来てね!」と私は言いました。
いつかは、いつかでした。今年とか来年とかではなかったのです。
おばあちゃんの言葉を聞いた時に、もっと早くにやってあげればよかったと、後々後悔をすることになります。
2016年に入り、思い立って鎌倉で個展をすることを決意しました。
おばあちゃんに「今展示できるところ探してるからもうちょっと待っててね」と言って、
家から行ける距離にギャラリーはないか、展示できる場所はないか、探しました。
おばあちゃんは歩くのも大変だったので、車椅子で連れて行ってあげるという話になり、車椅子で入れるような広いところを探します。
思いのほかすぐには見つからず、夏を迎えます。
すっかり行きつけとなったほしの珈琲豆やさんで、ぽつっと私がこの話をしたところ、栄和堂さんの話が出ました。
私が昔通っていた「本屋の栄和堂」は、店主さんの急逝により2014年に閉店。
そして2015年に「ブックスペース栄和堂」に生まれ変わっていました。
「あそこは時々ライブもやってるし、できるんじゃないかな。相談してみたら?」
ほしのさんの後押しがあり、その足で私は栄和堂さんへと向かいます。
初めて訪れたにも関わらず、メニューを頼むでもなく、私がしたのは展示をさせてほしいというお願いでした。
経緯を伝えると、不躾なお願いにも関わらず、店長さんもマスターも嫌な顔は一切せず、すぐに快諾してくださったんです。
「やってみましょう」と。
こうして、私と栄和堂さんは、本棚をギャラリースペースにするという新たな試みをスタートさせることとなりました。
もちろんすぐに、おばあちゃんに報告。
「栄和堂なら行けるね。楽しみだわ」
穏やかに笑うおばあちゃんの表情は、パッと明るく輝いて、それは決して部屋に差し込む太陽の光のせいではありませんでした。
やっとおばあちゃんに個展を見せてあげられる。
その後も何度か栄和堂さんと打ち合わせをして、8月中旬頃、ついにDMができあがります。
タイトルは、
「手紙〜おじいちゃん、おばあちゃんへ〜」
会期に敬老の日が入るのと、私が3歳の頃に亡くなったおじいちゃんの命日が重なっていたこともあり、このタイトルにしました。
DMをニコニコと眺めるおばあちゃんの顔が、今でも忘れられません。
8月末。おばあちゃんは誕生日を迎え、92歳に。
しかし、それは突然訪れました。
叔母さんから母に「お母さんの様子が変なの。会話が全然できなくて」という電話。
脳梗塞でした。
しかし意識もあり、すぐに病院に運ばれたためすぐに回復し、会話もできるようになったので、ひと安心。
「個展まであと1ヶ月ないんだもの、早く元気にならないとね!」という私に、
「うん、そうだね。ホットサンド食べながらひとちゃんの個展観ようね」と笑います。
でも、ちゃんとした会話をしたのは、それが最後でした。
翌日から急変し、意識がまったくない状態に。
時々目が開いて、私たちの声に反応することもあったのですが、
おばあちゃんの脳はもう、ほとんど機能しておらず。
92歳。回復は、難しいものでした。
それから数日後の9月10日。
意識がほとんどなく寝たきりとなったおばあちゃんがこの日、
なぜだか遠くの空をじっと見つめていたので、私はおばあちゃんにDMを見せながら声をかけました。
「おばあちゃん、あと開催までもう少しだよ!今一生懸命準備してるから楽しみにしててね!」
すると、重い体が起き上がり、益々細くなった小さな手がDMに。
言葉を出そうにも出ないおばあちゃんの声。
でも、「必ず観に行くよ」と言ってくれている、そんな気がしました。
その日、おばあちゃんは病室の窓から見つめていた空の方へと行ってしまいました。
あの空の向こうに、おじいちゃんが居たのかもしれないなあと、ぼんやりと空を眺めて泣きました。
「ごめんね」
としか、言えません。ありがとう、ごめんね、ごめんね。
もっと早く、あと1ヶ月、2ヶ月、もっともっと早くに個展をやっていたら。
後悔は、今も残っています。
栄和堂さんでの個展は予定通り行いました。
天国からおじいちゃんとおばあちゃんが来てくれるはずだから。
おばあちゃんが楽しみにしていた個展だから。
ちゃんと、DMもおばあちゃんと一緒に空に連れて行ってもらったから。
初日、母とお店に訪れホットサンドを注文。
店長さんとマスターのお心遣いで、私と母と、おばあちゃんの分のホットサンドも作ってくれました。
こんなにも温かいお二人がいてくれたからこそ、開催できたと心底思います。
実はこの時のこと、タウンニュースに取り上げていただきました。
https://www.townnews.co.jp/0602/2016/09/16/349051.html
いろんな複雑な思いの中での開催ではありましたが、
おばあちゃんがここに居たからこそ、湘南深沢の人たちと繋がることができ、
いつ行っても「こんにちは!」から始まり、いろんな会話をして笑顔でいることができます。
それは、おばあちゃんが私に残してくれたかけがえのない財産です。
栄和堂さんでの個展は2017年にも開催しました。
この時は、大好きなホットサンドと期間限定でコラボレーション!
私の意見を取り入れながら、マスターのピカイチの腕で絶品のアップルシナモンジャムを作ってくれました。
理想以上の最高に美味しいアップルシナモン。
会期中食べた方からも大好評をいただき、「来年もやりましょう!」と締めくくったのを覚えています。
栄和堂さんは、私の著書「まるちゃんのはらぺこパンBOOK」に続き、
今年発売になった「日本全国 しあわせ喫茶&カフェ探訪」にも掲載させていただきました。
2018年も、ここで個展をするつもりでいたんです。
しかしながら、これもまた突然のことでした。
「ブックスペース栄和堂」は、2018年10月25日をもって、閉店します。
https://www.townnews.co.jp/0602/2018/10/19/453805.html
いろんなご事情があるので、そこは私から触れることはしません。
ただ、とてもとてもとてもとても、とても寂しいです。
本屋さんの頃からお世話になっていた「栄和堂」。
閉店当日は家庭の事情によりお伺いできないので、
先日、食べ納めしてきました。
大好きなハニーマスタードチキンと、秋を感じるくりきんとん。
マスターお手製の具材はどれも絶品。
もちろん私は全て食べました。
季節限定の中では、中華あんがお気に入りです。
それも、もう食べられないのかと思うと、やはり寂しくなります。
自家製ピクルスがまたすっごく美味しいんです…
湘南深沢は、これから大きく変わっていくと思います。
それがよい方向に変わるのかどうなのか、それはわかりません。
でも、私の愛する湘南深沢には、私の愛する人たちが暮らしていて、
そして愛情をいただいて私はここにいます。
この深沢という地域が大好きです。
おばあちゃんが残してくれた、私の居場所。
いつでも「おかえり」と言ってくれる場所。
「さよなら」よりも「またね」がいい。
栄和堂の店長さん、マスター、本屋のご主人、
そして
おじいちゃん、おばあちゃん、
本当に本当に本当にありがとうございました。
大好きです、ずっと。
これからも、湘南深沢を盛り上げるお手伝いができたらいいな。
まるやまひとみ